日本における桜の愛好の歴史は古く、養老4(720)年完成の『日本書紀』の「履中紀」3年の条(402年頃)に既に桜の花にまつわるエピソードや和歌が記されています。
奈良時代、花の賞玩は桜よりも梅が盛んであり、このことは『万葉集』の梅の和歌が119首であるのに対し桜を詠んだ和歌が42首であることからも伺われますが、平安時代になると一転し、承和年間(834-848)に内裏の正殿である紫宸殿の梅の花が桜に植え替えられ、『古今和歌集』においても春歌133首のうち梅の和歌が18首、桜の和歌が70首と、桜を詠んだ和歌が春歌の過半数を占めることになりました。
以降、桜は春を代表する花として、そして近世以降は日本を象徴する花として、詩歌や美術工芸品の主題として用いられるようになります。
桜の花見が公式行事として行われた記録は、平安時代に遡ります。
弘仁3年(812)、嵯峨天皇が花宴の節を行ったのを初めとし、以降公宴として花見が繰り返されるようになりました。
江戸時代になると、庶民の間でも花見が楽しまれるようになります。桜の名所に繰り出し、酒を飲み交わす現在の様な花見のスタイルが確立します。
つぼみが膨らみ、満開になってから、やがて散りゆくまで。
桜はその時々の姿で、見る人に様々な思いを残します。
桜をモチーフにした図案にも、満開に咲き誇る様子を描いた物から、はらはらと落ちる花びら、流水や月との組み合わせらなど多様を極め、見ていて飽きることがありません。
何時の時代にも、桜は人々の心を優しい幸福感で満たしてまいりました。
今年も、皆様お一人おひとりに、素敵な桜との思い出が生まれますように。
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