清涼をもたらす夏のモチーフ

-視覚で楽しむ涼- 暑い夏を乗り切る智恵

現代の様に冷房が無かった時代、高温多湿な日本の夏を少しでも快適に過ごすために、私たちの祖先は衣食住に様々な智恵を凝らしてきました。
水や風を感じさせる紋様を生活の中に取り入れる事も、そんなも工夫の中の一つです。

この度は、榛原に伝わる図案の中から涼やかな夏文様をご紹介します。

水紋 涼しげで穏やかな空気を連想させる流水紋

涼しげで穏やかな空気を連想させる流水紋

とくとくと湧き出る泉や、さらさらと流れる小川。
水のある風景は、涼しげで穏やかな空気を連想させます。
豊かな自然と共にあった日本において、水は生命を象徴する神聖な物でした。
水の流れる様子を数条の曲線で表した流水紋は、既に弥生時代の銅鐸の装飾に用いられていましたが、江戸時代には花や器物との取り合わせにより、更に種類を増す事になります。

能の観世宗家の定文である観世水や、尾形光琳の水の表現をなぞった光琳水など、定形化した図案も生まれました。

竹久夢二が描いた「水辺」の図案は、観世水の文様にゆらぎを加え、独特の世界観を表しています。
水面に葉っぱがひとひら、またひとひらと落ちる静かな水音も聴こえてきそうです。

金魚 水中で花開く尾ひれ

-金魚– 水中で花開く尾ひれ

江戸前期は贅沢品であり、限られた人しか手に入れる事ができなかった金魚。
豪商などの富裕層が、天井にとりつけたガラスの水槽に金魚を泳がせ、下から眺めることにより暑気払いをしたと伝えられています。
江戸後期には盛んに養殖がおこなわれ、庶民の愛玩動物として人気を博すようになりました。

天秤棒の両端にたらいをつるして売り歩く金魚売の姿や、のんびりとした売り声は、江戸の街には欠かせない風物詩の一つでした。
艶やかな尾ひれが水中で花開く様子が涼しげであるという事から、夏の団扇や浴衣の柄として多く用いられます。

朝顔 凛とした姿と涼しげな色合い

-朝顔– 凛とした姿と涼しげな色合い

万葉集の中で詠まれる「朝顔」は、朝咲いて、昼にしぼんでしまうムクゲや桔梗等の花を指しました。
現在の朝顔は、平安中期、遣唐使によって日本に伝来します。当初はむくみ、便秘、痛風などに効く漢方薬として用いられ、牛一頭と交換するほど高価だったので「牽牛花」とも呼ばれました。

品種改良が重ねられ、観賞用になったのは安土桃山時代。現在の朝顔に比べると、小ぶりで凛とした花であったと言われています。
江戸時代には朝顔の品種改良が大きく進み、観賞用植物として大変な人気を博する事となります。
凛とした姿と、清涼感を感じさせる彩りは、夏の風物詩として浮世絵などにも着物姿の女性と共に描かれました。

波千鳥 海の風や波の音を思い浮かべる

-波千鳥- 海の風や波の音を思い浮かべる

「梅にうぐいす」、「月に雁」。二つの取り合わせで景色を思い描かせる風景文様は、古くから好んで使われました。
千鳥は、河原や海辺に見られる小鳥の総称です。その甲高い鳴き声や、群れ飛ぶ姿は寂しい冬の季語ですが、波と組み合わせて真夏に使う事で、涼を感じさせる図柄となりました。

榛原の復刻図案ぽち袋に描かれた波千鳥は、単純化された波といい、和やかな表情の千鳥といい、のどかな夏の海を連想させます。

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